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notatione digna?

岡山大学でドイツ地域を中心に西洋史(中世史)を研究している大貫俊夫のブログ。

Ingrid Voss, Herrschertreffen im frühen und hohen Mittelalter

授業の準備も兼ねてIngrid Voss, Herrschertreffen im frühen und hohen Mittelalter, Köln/Wien 1987の第2章「支配者会談の場所」、特にそのうち盛期中世に関わる第3節を読みました。1987年出版というとまだ新しいと感じてしまうのですが、実際は25年以上経っているわけで、すでに一昔前の研究に属してしまうわけです。

本書は初期中世から13世紀までの独仏国王の会談に着目し、その場所の特徴や会談の形式、内容をまとめたものです。情報が多く盛り込まれ、整理上手だというのが第一印象。しかし詳しく読んでみると、Walter Kienastなどで自明視されてきた諸事実が再検討されており、独仏国王の会談場所が改めて措定されています。

独仏国王の会談の特徴は、ひとえに頻度と場所とにあります。まずその頻度は大変低い(英仏が比較対象として挙げてありました)。特に11世紀後半から12世紀前半に完全に中断してしまっている点が興味を引きました。

場所に関しては、オットー〜ザーリアー朝期はドイツ王国内のムーズ=シエル(Chiers)川間で行われることが多かったのですが、約100年の中断を挟んでシュタウフェン期になると、しばしばロレーヌ地方のToul/Vaucouleurs近郊になります。この変化をもたらしたドイツ側の事情として、筆者は国王の本拠地(オットー朝ならザクセン、シュタウフェン期ならシュヴァーベン)の変化を挙げ、そこから近いフランスとの国境付近が会談場所として選ばれているのではないかと推定しています。

会談が開催される場所とその選定のためのネゴシエーションの過程を考察することで、国王同士の格の違いなどが見えてきます。ともあれ、独仏両王の会談はほぼ100%僕の関心領域であるロタリンギアを舞台にして行われるため、改めてその政治的背景も含め押さえておかないとと思った次第です。