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notatione digna?

岡山大学でドイツ地域を中心に西洋史(中世史)を研究している大貫俊夫のブログ。

2度目のベルンカステル=クース

ドイツ滞在もあとわずか。博論で忙しくなる前は,よく週末に日帰りで近郊の観光スポット(ほとんど教会施設)を訪れていた。もうそれもできなくなるので,久しぶりに電車とバスで1時間程のベルンカステル=クースに行ってきた。場所の選定はひとえにフェイスブックで流れてきた情報による。今日ここの聖ニコラウス救貧院(St. Nikolaus Hospital)で中世の写本の展示会をやっているというのである。しかも最終回。これは行かない手は無い。

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(写真が暗目なのはドイツの冬だからです)

ベルンカステル=クースは,元々モーゼル川を挟んでベルンカステルとクースという二つの集落に別れており,20世紀初頭に合併した。元はローマ時代の城塞で,中世盛期から城塞とその周辺集落はトリーア大司教の支配下に入った(ただし大空位時代以降王権によって都市特権が与えられている)。

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そしてこの町がとびきり有名なのは,モーゼルワインの一大産地であることもさることながら15世紀の神学者・哲学者クザーヌス(ニコラウス・フォン・クース)の生地だからである。彼が1401年に生まれた家,及び彼が寄進した前述の救貧院がその名残である。

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クザーヌス(写真はWikipediaより)

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バスはクース側のショッピングモールに到着する。まずは昼食を食べようと救貧院(今は教会及び老人のデイケア施設及び研究施設)のヴィノテークに行ってみた。ところが冬期は完全休業。やはりこういう類の観光地は夏に来るべきである。仕方ないのでベルンカステル側に渡り,適当にホテルを探す。真冬のドイツの日曜日にどこかで外食したいと思ったら,ホテルのレストランを探すのはセオリーである。小ぢんまりとした奇麗な町並みを歩いて,一軒のお店を見つけた。

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ここでイノシシと七面鳥をいただく。いずれも洋梨など果物が添えられてあり,臭みを消す努力が。その甲斐あって実に味わい深く,量も適切だったこともあって大変満足した。

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食事をしてから少し歩き,ベルンカステルの町並みを見て楽しむ。

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クース側に戻って救貧院でやっている展示会へ。比較的狭い部屋に,想像以上に人がいて驚いた。とはいえ皆地元の知り合い同士らしく,実に和気あいあいとした雰囲気であった。展示物は例えばクザーヌスの著作や彼が使用した聖書,そしてひと際目立ったのは教会法の写本である。13〜14世紀に筆写された教皇勅令集や,有名どころではLiber sextusもあり,誰の手かは分からないが欄外に書き込みがびっしりなされていた。なお会場内は撮影禁止。

想像以上に見応えのある写本群をだったが,残念ながら帰りのバスの時間が迫る。うまくバスに乗れて帰途についたのであった。しかしまあ,それにしてもこのヴィットリヒ〜クース間のバスはひどい。猛スピードでろくにブレーキを踏まずカーブの多い道を走るものだから,完全にグロッキーになってしまった。一緒に来ていた娘があわや・・・というところまでいったが,かろうじてセーフ。ヴィットリヒで冷たい風にあたって気分転換をし,娘は機嫌良くトリーアへ向かう電車に。