notatione digna?

岡山大学でドイツ地域を中心に西洋史(中世史)を研究している大貫俊夫のブログ。

Lexikon des Mönchtums und der Orden

今年はなるべく専門の修道院研究について、たくさん発信していきたいと思います。

昨年は予算がついたこともあって、目に付いた修道院関係のリファレンスをできる限り購入しました。そのうち幾つかを紹介していきます。

Isnard W. Frank OP, Lexikon des Mönchtums und der Orden, Stuttgart 2005, 2013.

http://www.reclam.de/data/cover/978-3-15-019146-0.jpg

Johanna Lanczkowskiが作ったKleines Lexikon ... (1993)をFrankが2005年に改訂、それが2013年にレクラム文庫としてペーパーバック化されました。H-Soz-Kultに2005年版の書評があります。

I. Frank: Lexikon des Mönchtums und der Orden | H-Soz-Kult

全626項目ですし、項目ごとに参考文献は掲載されていませんが、巻末の文献目録はそれなりに有用です。記事は年号がしっかり記載されているので、パッと引きたいときに便利ではないかと思います。冒頭に修道院史を記述したEinleitungがついています。

新年の抱負2016

新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

昨年の記事を見て、ちょうど1年前に振り返りと抱負を書いたのを思い出しました。昨年はいかに抱負の通りにできなかったのかを反省するためにも、今年も同じことをしたいと思います。

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昨年の研究・教育活動は、主だったところで以下の通りです。

1月:井上周平さんによるゲスト講義
   分担をやっている科研費プロジェクトの研究会(@岡山大学)で報告
3月:「近代史の現在」シンポ(@福岡大学)でコメント
   書評1本刊行
7月:国際中世学会(@リーズ大学)で報告
10月:早稲田大学高等研究所セミナーシリーズ〈新しい世界史像の可能性〉(@早稲田大学)で報告
11月:論文1本、書評1本刊行
   講演会「女性の貧困」開催(@岡山大学
12月:トレント・ワークショップで報告(@イタリア・ドイツ歴史研究所)
   映画上映会「『首相官邸前で』ー反原発デモと人文学」(@岡山大学

まずは研究面から。去年書いた通り、ひとまず査読誌に論文を1本のせることができたのは良かったです(「盛期中世におけるシトー会修道院の小教区=農村共同体形成への関与に関する研究」)。これはresearchmapでダウンロードできます。

あと専門に近い2冊の本(ジャイルズ・コンスタブル(高山博監訳)『12世紀宗教改革:修道制の刷新と西洋中世社会』杉崎泰一郎『修道院の歴史ー聖アントニオスからイエズス会までー』)の書評を書かせてもらったのも、自分の問題関心を言語化できたという意味でも有益でした。コンスタブルの方は機関リポジトリからダウンロードできます。

7月以降の口頭発表は、先程の査読論文と同様、いずれも現在2年目の個人科研による成果です。基本的な内容はかぶるのですが、少しずつヴァージョンアップすることができました。今後はもっと事例を網羅的に集めて、新しいフレームワークの中に落とし込んでいきたいと考えています。来年がこの科研の最終年度なので、あともう一踏ん張りです。

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昨年、こんなことを書いていました。

研究面における新年の抱負として、まず何より執筆活動とそのための勉強に専念します。一つは博士論文の刊行に向けた修正作業。これはとにかく迅速に進めないといけません。それが終わったら、去年出版社の方と話だけは進めておいたプロジェクトに全力を注ぎます。

そういうこともあって、昨年沢山行った口頭発表は極力減らすつもりでおります。現段階で3月に西の方でコメンテーター的なお仕事が決まっていますが、それくらいにとどめておきたいのが正直なところです(実際蓋を開けてみたらどうなるか全くもって分かりませんが・・・)。

いやー、未来のことって本当によく分からないですね!この抱負は一顧だにされず、結果としてトレントまで行って貴重な経験をさせてもらいました。巡り合わせといいますか、成り行きといいますか、そういうもののありがたさを実感しております。

しかし、今年もこの調子だと信頼して待ってくれている方々に面目が立ちません。そのため今年は、①ドイツ語単著(2016年1月末締め切り)、②日本語単著(2016年夏までに目処を)、③翻訳書(2017年1月締め切り)の3つの課題に専念し、外でのお仕事はお引き受けしないようにいたします(と、今年も言っておく)。それとは別の事情もあり、あまり学会、研究会にも顔を出すことはないでしょう。慶應でやる日本西洋史学会は諸事情により参加しますが。

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教育面では、まず「西洋史講義」に畏友井上さんを呼べたのがとても刺激的でした。あとは昨年の宣言通り、中世史の分野で卒論を書く人向けの演習を通年で開講できたのも大きな変化。これは来年も継続して、今度は大学院生と一緒にやろうと思います。

大学院生と言えば、来年は中近世史で念願の大学院生が2人入ってくれる見込みです(内部1、外部1)。まだ卒論を書いているところで、研究能力がどこまでのものになるのか未知数ですが(それが9月入試の問題点)、いろいろなことに関わってもらいつつ、一緒に勉強できればいいかなと。

岡山大学は来年度から、どこよりもラディカルな改革を行って60分授業・4学期制を導入することになりました(主要大学の多くで4学期制はやるようですが、60分はさすがに・・・)。しかし、1コマ60分にするメリットは結構あると感じています。その一環として、来年後期に開講する「西洋史講義」は、これに「人文学インタラクティブ講義」という60分1コマの新設科目をくっつけて、実質3コマでやっていこうと思っています。英米で採用されている講義形式ですが、3コマ目はTAにも手伝ってもらいながら少人数でディスカッションをします。年末はこれをやろうと思い立ち、まず賛同して一緒にやって下さる先生に声をかけ、制度的に可能にしてもらうため執行部の先生方にかけあっておりました。おかげさまで、岡山大学文学部では4つの授業でこの新形式を志向する見込みです。どうぞお楽しみに。

以上をもって新年の抱負とさせていただきます。とにかく楽しみながら、ある程度ゆとりを持って。今年もどうぞよろしくお願いします。

 

映画上映会「『首相官邸の前で』ー反原発デモと人文学」報告

12月17日に行った映画上映会「『首相官邸の前で』ー反原発デモと人文学」は130人ほどの来場者を得て無事終了しました。

報告文を文学部ホームページに上げましたので、よろしかったらご覧下さい。

www.okayama-u.ac.jp

 

こういったイベントの運営ではいつも何かしら問題が起こるのですが、今回は結果として会場での意見交換がしっかり行われ、むしろ製作者の意図にかなったアフタートークになったのではないかと思います。

映画上映会&講演会「『首相官邸の前で』ー反原発デモと人文学」のお知らせ

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年内のイベントとしてはこれが最後になります。参加者として学生に限定はしませんが、なるべく多くの学生に来てもらい、意見交換をしたいと思います。

このイベントの目玉は小熊英二さんのスカイプ出演です。イベントでスカイプ中継をするのは初めてなので、技術的にうまくいくか、事前に予行練習しておかないといけません。イタリアから帰ってきてすぐに対応できるか不安ですが、頑張ります。

 

【日時】2015年12月17日(木)18:00~21:00

【場所】岡山大学津島キャンパス 文法経講義棟20番講義室

【テーマ】「首相官邸の前で」 ―反原発デモと人文学

【内容】

 映画上映 「首相官邸の前で」(2015年、企画・政策・監督 小熊英二

 講演会(Skype出演) 小熊英二慶應義塾大学総合政策学部教授) 

【概要】
 2015年夏、国会前は人であふれ返った。安保法案に反対する人々が集ったからである。しかし、実は日本における社会運動の転機は「密かに」2012年夏に起こった。本作は、原発政策に抗議するデモの様子を記録したドキュメンタリーである。デモには性別も世代も立場も異なる人々が20万人集まったにも関わらず、ほとんどマスコミに取り上げられることはなかった。その映像記録と8人の体験談を織り交ぜた本作は、戦後日本の代表システムと報道メディアの機能不全、市民社会の成長と停滞、高度成長を果たした日本経済が抱える矛盾と貧困問題―そしてそうした問題を観察・考察し続ける人文学のあり方について考える機会を与えてくれる。本イベントては、映画観賞後に監督の小熊英二さんにスカイプを通して講演をしていただき、さらに参加者による意見交換を行う予定である。

【対象者】どなたでもご参加いただけます。

【申込方法】申込不要

【参加費用】無料

主催:岡山大学文学部
   2015年度岡山大学文学部プロジェクト研究「貧困とマイノリティ/マージナリティ:人文・社会諸科学による学際的アプローチ」

 

 

 

国際シンポジウム「中近世の宗教史-ヨーロッパと日本からの視角」

科研費基盤A「ヨーロッパ中近世のキリスト教世界の多元性とグローバル・ヒストリーへの視角」(代表:甚野尚志 早稲田大学教授)の一環で、今度の日曜日から1週間イタリアに行き以下のワークショップで報告してきます。先ほどやっと報告原稿が出来上がり提出したので、ずいぶん気が楽になりました。

Fernanda Alfieriさんとお会いするのも楽しみですし、イタリアのシトー会研究者Guido Cariboni さんも参加するので、とても有意義な研究交流ができそうです。

 

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Medieval and Early Modern Religious Histories: Perspectives from Europe and Japan

Second Meeting
Trento, 11-12 December 2015

11 December 9.30
Welcome and Introduction
Paolo Pombeni (FBK-ISIG, Trento)
Takashi Jinno (Waseda University, Tokyo)
Fernanda Alfieri (FBK-ISIG, Trento)

Session I: Politics and its Narratives
Chair: Fernanda Alfieri
Takashi Jinno (Waseda) Political Metaphor and Imitation of Nature in the Medieval “ Mirrors for Princes”
Serena Ferente (King’s College) The Body Politic and its Passions in Late Medieval Italian Political Languages
Elena Bonora (Parma) - Animal Imagery in Sixteenth century Italy: a Political Use
Taku Minagawa (Yamanashi) Peace-understanding of the Political Theologians of Holy Roman Empire in the End of the Religious War
Federico Barbierato (Verona) Political Astrologers and the Cabinet of Providence. “Popular” Politics, Public Discussions and the Rheme of Secrecy in Early Modern Italian Towns

11 December 15:00
Session II: Encounters
Chair: Takashi Jinno
Toshio Ohnuki (Okayama) - Comparative Study on Contributions of the Cistercians to the Communal Life of Parishes in Medieval Germany
Guido Cariboni (Università Cattolica) The Cistercian and the Laity in the Thirteenth Century Italy. The Familia Monastica
Kazuhisa Takeda (Waseda) Introducing Christian Social Discipline among the Amerindians: the Confraternity System in the Jesuit-Guaraní Missions of South America
Michela Catto (FBK-Isr)- Intellectual Independence of the Philosophes: Tolerance and Dignity in the Jesuits’ Letters from China

12 December 9:30
Session III: Perceived bodies
Chair: Federico Barbierato
Giovanni Ciappelli (Trento) The Body in Early Modern Egodocuments. Representation and Identity Construction
Fernanda Alfieri (FBK-Isig): Mapping the Body for the Salvation of the Soul. Spanish Scholasticism on Marriage and Sexuality
Mayuho Hasegawa (Tokyo) An Anatomist’s Gaze on Bodies and Skin in Early Eighteenth Century: Perception of Mind and Body in Transition

Final discussion perspectives and projects
Lucia Dolce (Soas, London)

11月20日公開講演会「「女性の貧困」を考える」

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3年目になる岡大文学部の〈貧困〉プロジェクトで、立命館大学の丸山里美さんをお招きして「「女性の貧困」を考える」という講演会を開催します。同僚の高谷さん(社会学)がコーディネートして下さり、感謝感激です。


日時:2015年11月20日(金)17時〜19時
場所:岡山大学津島キャンパス文法経1号館2F会議室

 

参加費無料、申込不要でどなたでも参加できますので、みなさんぜひご来場下さい。なお、コメントとして岡山・ホームレス支援きずなの豊田さんにもお話を頂戴します。去年の児童養護施設に関してもそうでしたが、このプロジェクトではなるべく岡山で活動されている方の生の声を聞きたいと思っています。
〈貧困〉プロジェクトは、社会学文化人類学から文学にいたる様々な領域の先生とともに、「貧困」が発生する社会の条件や「貧困」についての認識・表象などを考えることを目的としています。今年度はその他に映画上映会&講演会を2回開催する予定ですので、詳細が決まりましたら随時ご報告いたします。

2015年度研究室旅行

岡山大学西洋史での研究室旅行は、僕が着任してすぐの年に愛媛の松山(道後温泉)、去年が県内の湯郷と続いていて、今年は香川の琴平に行って参りました。幹事の2人が大変優秀で、金比羅さんの参道近くの素晴らしい宿を安価で押さえることができ、とても楽しみにしていました。

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参加人数は総勢42人。ますます人数も増え、活気のある研究室になっていて嬉しいです。教員2人体制は正直しんどく、人数制限・テーマ制限を設けたいと思うこともありますが、厳しくも楽しい授業内容・卒論執筆に果敢に挑む学生が来てくれる以上、拒むわけにもいきません。

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今年も4年生による卒論の中間報告会をすることが主目的ですが、それ以上に、普段顔を合わせることが少ない者同士が夜遅くまで語り明かすのがよいのですよね。僕も自分の演習に出ていない面々と話すことができました。岡大文学部では(あるいは多くの私大では学生数も多いので)先生単位・ゼミ単位でまとまっているところもありますが、やはり「西洋史」というくくりで、毎週顔を合わせることのない人とも旅行することが肝要だと再認識しました。

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うどんを食べたら、ひたすら金比羅さんの石段を登っていきました。木の杖は無料で貸してくれるところもあれば、100円とるところもあります。

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本宮からの眺め。ここで引き返してもいいのですが、まだ少し時間があったのでさらに登ります。一番奥まで行くと往復2時間かかり、汗をかくくらいのいい運動ができました(降りたときには足が震えるくらいにはなった)。

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中間報告会は夜の宴会場と同じ場所で。広い座敷の壁沿いに座布団を並べます。

時間が限られていると、報告に対し教員が質問・アドヴァイスをしてはい次、となってしまうものですが、今年は意識的に学生側からの質問を促すことに。実際にやってもらうといい質問するのですよね。できることは分かったので、今度は授業中にそれをぜひ・・・。4年生の進度は人それぞれですが、いい論文を書いてくれるのを期待しております。とにかく困ったら教員の研究室を訪ねることです。

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同じ場所で晩ご飯。その後も、温泉に入ったりしながら二次会部屋で遅くまで語り明かしたのでした。僕は1時頃退散。

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あまり熱心なカメラマンではなかったので、2日目は省略。最後に全員の集合写真を。今年も研究室旅行ができてよかったです。

 

告知「中近世キリスト教会における司牧と社会」

早稲田大学高等研究所セミナーシリーズ〈新しい世界史像の可能性〉(ES研共催)として、「中近世キリスト教会における司牧と社会」と題する研究会が開催されます。そこで研究報告をしますので、お時間がある方はぜひお越し下さい。

 

日時:2015年10月24日(土) 14:00~17:00
場所:早稲田大学戸山キャンパス39号館5階第5会議室

テーマ:「中近世キリスト教会における司牧と社会」

報告(1)
大貫俊夫(岡山大学准教授)
「盛期中世ドイツにおけるシトー会修道院の小教区共同体への貢献に関する比較研究」

報告(2)
武田和久(早稲田大学高等研究所助教
カトリック・グローバリゼーションと社会的規律化―スペイン領南米ラプラタ地域のイエズス会布教区における先住民信徒組織(cofradía indígena)を中心に―」

 

基本的に7月にリーズで話した内容と多くが重なりますが、これまではあまり過去の研究史を直接批判するような論調ではありませんでした。研究史批判というのは大きく分けて2通りあって、①過去のテーゼに「それは間違っている」と言ってより正しいテーゼをぶつけるやり方と、②「過去こういう観点からは研究されてきませんでしたよね」と言って新しい観点から議論を始めるやり方です。リーズでも、あるいは今初校が来ている投稿論文でも、どちらかというと②で済ませていたのですが、とある有名な研究書をひも解いてみたら関連する言及があり、それがどうも僕の見立てとは違っているのです。そのため、この研究会では①のやり方で、あえて論争調に議論を展開してみたいと思っています。あとは少しでも新しい史料を提示できるといいのですが、あと3週間強でどれだけ進められるか、正直あまり自信はありませんが頑張ってみます。
一緒に報告させていただく武田さんとは、今年の西洋史学会の小シンポジウムで初めてお会いしました。こちらは盛期中世のシトー修道会、あちらは近世のイエズス会。「司牧」という共通テーマでどういう議論ができるかとても楽しみです。